第110回 画期的な内容の「愛知県史 通史編 中世2・織豊」ほか、地元歴史本が続々刊行中

中日Web「尾張時代の信長をめぐる」過去記事 

2018年5月3日

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3月30日付けで「愛知県史 通史編3 中世2・織豊」が愛知県から発行されました。少し協力させていただきましたので、さっそく目を通すことができました。

通史編3は792ページもの厚い本となっており、15世紀末の明応の政変から1600年の関ヶ原の戦いまで、100余年にわたる戦国・織豊期の尾張・三河の姿が、政治、経済、社会、文化という様々な方面から比較的わかりやすく書かれています。比較的というのは、やはりそれなりの知識を持った人でないと、わからない部分も多いと思うからです。逆に少し勉強している人には、時系列で書かれていますから、歴史の流れが大変わかりやすく頭に入ってきます。

この連載でも書いてきているとおり、この時代の研究は昨今急速に進んでおり、様々な新しい見解がでてきています。この県史にはそうした最新研究の成果が盛り込まれており、学術的研究に基づいた現時点で最も新しい歴史ストーリーが書かれています。さすがにまだ全部は読めてはいませんが、信長関連の部分を読む限り、かなり突っ込んだ内容になっていると思います。

「1547年に織田信秀は今川義元と相談して、三河へ出兵。安祥城を攻め取り、岡崎城を囲んだため、松平広忠は降伏の印として、嫡子竹千代(後の徳川家康)を人質としたと推察される」というくだりなど、通説を覆していますが、県史という公の本で書かれたわけで、これか現時点での正しい歴史、ということになるのでしょう。

「通史編3」と共にその前の時代に関する「通史編2 中世1」も同時刊行されていますのでこちらも一緒に読みたいところです。発売開始は5月24日からで、価格は共に税込み5500円。図書館や大学へ配布されるため、市販部数は通史編2が400冊、3が500冊のみですので、欲しい方はお早めに愛知県総務部法務文書課県史編さん室 企画・刊行グループ(052-972-9171 kenshi@pref.aichi.lg.jp)へ連絡してください。

そしてもう一冊出ているのが、「ナゴヤ歴史探検」というビジュアルな本。こちらは名古屋市が発行して市立中学校の副読本として配布される教材ですが、ぴあを発売元として一般書店でも発売されています(税別830円)。雑誌のような作りで、古墳時代から現代までの名古屋の歴史のエポックが楽しく読めます。

この本では、桶狭間の戦いに関しては、緑区の桶狭間古戦場保存会の説が全面的に掲載されています。とてもわかりやすいのですが。もちろん、これが正解というわけではなく、桶狭間の戦いには様々な見方があります。ともあれ中学生がこれを読んで、少なくとも明治の陸軍が作った奇襲説が正しいのではないと知ってもらえれば幸いです。

なお、これらを読みたいと思う人なら、私の会社で出版したかぎや散人訳「現代語訳 信長公記天理本 首巻」(税別1800円)を読んでいただくと、さらに知識が深まります、と軽く宣伝をしておきます。以前、県史の資料編に天理本の翻刻が掲載されたため、この本を作ることができました。信長公記天理本は今回の通史編3でも資料として参考にされています。現代語訳では、県史とはまた異なる見解で歴史の流れを書いています。ぜひこの本もお読みください。お求めはamazonで。

そして、今年も桶狭間古戦場まつりが開催されますので、その告知もしておきましょう。6月2日、3日には豊明市の方が、また一週間後の6月10日には名古屋市の方の桶狭間古戦場まつりが開かれます。詳しくはチラシ画像をご覧ください。なお名古屋市の古戦場保保存会は今年からNPO法人となり、名古屋市と共に古戦場整備を一層進めていくとのことでした。期待したいところです。

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