2019年4月23日


このモニュメントが今後どんどん作られます
すでにできあがってから二ヶ月ほどたちますが、あまりメディアに登場しないため名古屋市民にもほとんど知られていない気がしますので、豊臣秀吉のモニュメントが道路に建った話を書いておきたいと思います。秀吉じゃなくて信長の方では、信長攻路と銘打って、清州城から桶狭間までの進軍ルートを観光開発しようという名古屋市の試みは少しずつ実を結んでいます。あちこちに立派な目印ができて、観光客も目を留めるようになってきました。名古屋城の観光客数もぐっと増えていますし、楽天トラベルのGW家族旅行人気伸び率で全国1位になったそうですし、名古屋の観光、最近好調とみてよいみたいですね。

信長が桶狭間合戦前に祈願したとされる熱田区の法持寺の門前にもこれが
そこで名古屋市は中村区が生んだ太閤秀吉についても観光開発しようと、中村区役所が中心となって「人生大出世夢街道・太閤秀吉功路」という武将観光を始めています。信長攻路の攻路は攻めるですが、秀吉功路の功路は成功の功として、秀吉の出世を顕彰しようというものですね。秀吉は中村区の生まれというのが通説で、中村公園には大鳥居で有名な豊国神社もあります。リニア新幹線名古屋駅から徒歩圏内であることを幸いとして、豊国神社を中心に秀吉、加藤清正などの関連地を観光名所にしようという計画です。そして新幹線駅ができるまでには完成させるべく、名古屋駅西口から豊国神社まで、秀吉の出世を描いたモニュメントを道路に建てて結ぼうという企画が始まったのです。このモニュメントを伝っていけば、豊国神社まで歩いて行けるわけです。

最初の八個は駅西銀座商店街から環状線までに建っています
2019年3月2日に最初の8つが名駅西銀座商店街沿いに完成し、中村公園で記念式典「太閤秀吉サミット」も開かれました。いつものように河村市長が元気に挨拶。名古屋国家「燃えよドラゴンズ」を熱唱していました。こういう武将観光に力を入れていただける市長には本当に感謝してます。ただ秀吉のようにわかっていない事が多い場合はまだいいとして、明らかに史実と違うことを検証せずに勢いでやっちゃうのは、ちょっと勘弁して欲しいのですけどね。何とはいいませんけど。


モニュメントは公開されてだいぶんたちますが、気づかれた人はいらっしゃいますか。秀吉はご存知のように農民の出身とも、賤民の出身ともいわれており、当然ながら幼少期の一次史料はありません。このため、絵本太閤記などの二次、三次史料を使って解説していくしかないのが辛いところです。そこで出来上がったモニュメントも絵本太閤記の図柄をベースにしたレリーフと解説文で構成されています。順番に読みながら進めば、秀吉の生涯がひと通りわかるというもの。石垣風の台座もなかなか凝っています。ぜひ全部見て回ってください。30分とかかりませんから。ただ説明文の内容は史料のない中、絵本太閤記をベースに書いてありますから、そこはご了承くださいね。だいぶん苦労して書いてあります。

レリーフと解説文、そして特設サイトへ跳べるQRコードという構成です
秀吉は出世に伴って尾張を出てしまいますが、秀吉の家臣たちに尾張出身者が多いのは周知の事実。同じ中村出身の加藤清正はもちろん中川区の前田利家、あま市の蜂須賀小六、福島正則など、尾張西部出身の有名武将の地元自治体にも今後はこの秀吉功路に加わってもらって、自治体の垣根を越え、連合して武将観光を盛り上げようという構想になっています。愛知県内にはこれら武将にまつわる話がいくらでもありますが、どうしても自治体ごとにしか紹介ができていません。尾張全体でとらえないとこの頃の歴史は面白くないので、この試みには大いに期待したいと思います。


豊国神社と中村公園の日吉丸(秀吉の幼名)銅像
織豊期から江戸期へ進む1600年前後の日本の情勢は、江戸時代の幕府編纂物や戦記物などによって、かなり捻じ曲げられているのではないかというのが最新の歴史研究です。信長、秀吉、そして混乱時代を経て家康へと続く日本の近世への展開は、日本の歴史で一番面白いところでしょう。「関ヶ原の合戦はなかった」などというエキセントリックな本もきちんとした歴史研究者が書くようになってきています。この先、この頃の研究が進むとさらに面白い話が出てくるでしょう。歴史の勉強をちょっとすると、どんどん新しく書き換わっていくのが楽しいのですよ。それはそうとして、秀吉功路で全国あちこちの人が中村に来て、信長ばかりでなく尾張の武将の話を楽しんでくれるといいですね。名古屋市には今後も期待してます。

さて、私の方は4月の毎月第一土曜の午後3時半から、桶狭間古戦場にも近い名鉄鳴海駅前の鳴海中日文化センターで「若き信長150名所スタンプラリー 尾張・三河・美濃の信長旧跡をめぐる」という講座を始めました。信長の痕跡を残す場所は、ざっと150はありますので、そこをディープにめぐってみようという長期講座です。座学一回、現地一回というパターンで5月は11日に熱田界隈を歩きます。講座途中からでも大丈夫ですので、ぜひご参加ください。それから5月2日には信長の父、織田信秀の菩提寺である大須の万松寺で「信秀なくして、信長なし。岡崎までも攻め取った信秀の終活」というテーマでトークライブを行います。こちらは無料ですからGW中ですし、お気軽におこしください。10時30分から1時間半、信秀のお話をします。